宮島さん 車いす利用者
僕は約1 年弱、この開発プロジェクトに関わらせていただきました。参加する中で「車いすからベンチに移動して利用したいこと」「実際にどうやって製品を使うのか」等、色んな意見を出させていただきました。僕としても有意義でしたし、こうした過程を経て生まれたモノが形になるのを見ると、参加してよかったなと思います。
製品のおすすめポイント
車いすでテーブルベンチを利用する時に、お誕生日席にならないところです。四角いテーブルだと、正面からしか利用できず、どうしても特別感・場にとけ込めていない感があります。今回のテーブルは角が丸いので真正面でなくてもアクセスできるので、ベンチに座っている人とのコミュニティの輪に入り込みやすい感じがします。車いすからベンチへの移動のしやすさ・座りやすさについても、検証を重ねたことで使いやすいものになっていると思います。
これからの公園について
車いすで公園へ行くと、ベンチの使い心地・駐車場のボラードの配置など、使えるけれど使いにくいものがあります。すると、車いす利用者の疎外感を感じ、公園へ行かなくてもいいかなと思うことがあります。なので、公園は誰もが行きたくなるような場所になれば嬉しいです。そのためには使いたいと感じる施設があると良いと思います。今回の開発プロジェクトでは、公園にあるものを使ってみることで多くのフィードバックができました。その繰り返しで使いやすい施設が生まれていくのかなと思います。
杉谷さん 視覚障がい(弱視)
私はこの開発プロジェクトの中でも、主にフィールドワーク・ワークショップに携わりました。公園のベンチについて機能や利便性を教えていただき、フィードバックではこうしてほしいという色々な要望を伝えさせていただきました。できあがった製品は細かい所まで気を配ってくださったなと感じ、ありがたいなと思っています。
製品のおすすめポイント
丸い形のテーブルです。私は弱視なので、日常生活の中でもつい角にぶつかりがちです。このテーブルベンチは角が丸いので不意にぶつかっても衝撃が少ないです。杖や傘を立て掛けるための凹みは、視覚障がいの人も高齢者の人も利用しやすいので良いポイントだと思います。見た目もやさしい感じがして安心します。
もう一つは車いすの人がお誕生日席にならないところ。ベンチに座る人と車いすの人がちょうどいい距離感でおしゃべりできるので、使い心地が良いと思います。
これからの公園について
私の中で、公園は子どもが遊び大人がのんびりする場所というイメージがあります。しかし最近では、少子化の影響もあってか、ボール遊び禁止・うるさくしちゃダメ...というようにのびのびする場所がギスギスした場所になっているようにも感じます。けれども、公園にはまだまだ子どもがいて、高齢者もいて、色んな人が利用する場であることに変わりはありません。
おじいちゃんと孫・知らない人同士、男・女も障がい者・健常者も色んな特性の人が集まって過ごせる、そんな場所であってほしいと思います。
タロさん 車いす利用者
私はこの開発プロジェクトでは、モックアップ検証の場から参加させていただきました。当時のデザイン案では半円状のテーブルに手摺用の取り付けを検討していましたが、「車いす利用者は自分で車いすを近づけ、ストップできる」ことを伝え、不必要な要素をなくすことになりました。その他にもケガの要因になりそうなところなど、健常者だけでは開発の段階で気づきにくいところを、障がい当事者の目線を交えて話し合うことができました。
製品のおすすめポイント
ケガのリスクを減らす工夫があることです。私は電動の車いすを利用しているのですが、生活の中で膝をケガすることがよくあります。できあがったテーブルにすっと近づいた時に「あっ危ない」テーブルに脚がぶつかってしまいました。しかし見てみると角がなく材質も優しいのでケガにはつながりませんでした。また、テーブル下の鋼材部分も角ばった箇所がないので、テーブルの下に膝が当たっても痛くありません。車いす利用者には、下を覗いて確認できないような部分なので不意のケガのリスクが少ないことは大切なポイントです。
これからの公園について
今回の開発プロジェクトでは、優しい心を持った人たちが集まって、お互いの持つハンディキャップに対する理解を深め合いながら製品を作り上げました。このテーブルベンチが公園に設置されたら、そんな優しい人たちが集う空間になったらいいなと思います。公園が誰もが楽しく過ごせるような場所になると嬉しいですね。
人と社会のつながりをデザインする
株式会社19(イチキュウ)は、文化や価値観の異なる人々が交わり、複雑さを増していく社会の中で暮らす【人】と、人々が動かす【社会】とのつながりをデザインすることをテーマに事業を展開する、ユニバーサルデザインのコンサルティング会社です。
代表取締役社長の安藤将大氏も視覚障がい者で、時に自身の経験も合わせながら、講演会から実際の制作に至るまで様々な場面を通して、多様な業界の企業や団体等と共に新しいモノ・コトを生み出しています。
共創力を培った「インクルーシブメディエーター」
株式会社19 では独自の研修を修了し、日々事業を共創する力を培っている障がい当事者を「インクルーシブ・メディエーター」として認定し、企業や団体との企画開発に巻き込んでいます。自身の抱える不便を理由も含めてわかりやすく発信し、課題や価値を提起することでインクルーシブデザインを実現してくれます。